2016.6.7 世界から猫が消えたなら


私は函館の町が好きなのかもしれない
上映中ずっと、美しいな  と思いながら観ていた
エンドロールで函館の名前を見つけた時、「やっぱり」みたいな気持ちになった

もちろん、撮り方が素晴らしいというのもあると思うのだけど、
ほんの少し前の日本がまだそこにあるような町並みと、港町特有の少し寂しげな雰囲気が、この映画の舞台にふさわしい  
と思った

同じように、函館を舞台に撮られた
「そこのみにて光り輝く」の退廃的な
閉塞感漂いまくりな雰囲気もすごく
良かったけれど、今回はもう少し光がある感じ
希望とか、愛とか、そういった類の光が。
自分の命の期限を知った事で見えてきた光が、スクリーンの向こう側に煌めいていた


ーーー  郵便配達員の主人公は、
ある日突然、病に倒れ、自分の命の期限がもうすぐである事を知る
深い絶望の中、家に帰るとそこには
自分と同じ姿をしたアクマ(ないしは死神)と名乗る男がいた
アクマは主人公に、
“この世から何かを一つ消すことで、1日の命を与えよう”
と持ちかける
主人公はアクマの誘いにのり、契約を交わしてしまう

しかし、世界から何かを消すこと
とは、そのものによって生まれた
出会いや、関係性をも消してしまうということだったのだ

自分の周りとの繋がりが消えていく
でも消さなければ、自分が消えてしまう
辛い葛藤を抱え、主人公は苦悩する
生と死の間で、過去と今の間で
ボロボロになりながら
物語のラスト、主人公は大きな決断をする ーーー

当たり前にあったものがなくなって初めて、
人はそれが存在する世界が当たり前でなかったことを知り、後悔する

それは物だけでなく、
人も然りで

誰かがいつ消えるのかなんて、
本当は誰も教えてはくれない
だから、いなくなってしまう前に
せめて、少しでも後悔が薄まるように
会いに行こう
想いを伝えよう

浜辺で、主人公がお母さんと
話すシーンと、もうひとつ、すごく好きなシーンがあったのだけど、
それはもう、泣いた泣いた
タオルに顔を押し付けて泣いた
そうしないと嗚咽が漏れてしまいそうだったから

「あなたに会えてよかった」って
そういってもらえるって、それだけでもう
十分なのかもしれない

原作のアクマはもっとハイテンション
なのだけど、映画のアクマのほうが
しっくりきて良かった
彼が主人公の姿であることが
大事なのだと思う

最後の最後でも、泣かされてしまったし
2時間ほどの間で何回泣いたか分からない
人間は短い時間でたくさん泣くと
疲れるのだと知った

久しぶりに思いっきり泣いた気がする
寂しさとそれに負けないくらいの
優しい幸せを貰った映画でした

観てよかった
間違いなく、今年のおすすめです